あなたの大切な一枚を届ける
上下町唯一の音楽専門店

じょうげレコード

音楽を聴くと、その当時の心の中が一瞬にしてよみがえります。この音楽に勇気をもらった、元気づけられたなど、音楽の力はいつの時代も色褪せることがありません。上下町で唯一の音楽専門店「じょうげレコード」は、創業から変わらないアナログな方法で、あなたの力のもとになる音楽を届け続けています。


レコードからそろう音楽の歴史空間

CD、カセット、レコードと音楽の歴史をなぞるような品ぞろえ

今から約50年前、上下町にはレコード専門店がなく、書店の一角にレコードが置いてある程度。注文して受け取るまでに、1カ月かかってしまうこともあったそうだ。「どうにかしてほしい」という音楽ファンの声を聞いた野田明子さん、通称「あっこさん」は、かつてレコード店に勤めていた経験をいかして1970年、「じょうげレコード」をオープンさせた。
店内には、CD、カセットテープ、レコードも並ぶ。壁にはアーティストのポスターや新聞記事の切り抜き、あっこさん手書きのメッセージがびっしりとはりめぐらされている。勢いは止まることなく、天井からも歌詞を書き写した紙が下がる。あっこさんの音楽への思いの強さに圧倒される。
その中の一つに、ぜひチェックしておきたい1枚がある。「音楽は生きる力 聴いて歌って 元気に」。久しぶりに音楽をじっくりと聴きたくなった。私の大切な一枚を思い出してみる。中古レコードも扱っているので、懐かしい一枚との出合いも楽しい。2階にはカラオケルームもある。好きな歌を思い切り歌って元気になることもできる。

オープン当時、邦楽レコードは330円、洋楽レコードは370円。映画を200円で鑑賞できた時代

同店2階のカラオケ店。ステージはお客様が作ってくれたそう

この音楽をあの人に届けたい

レコードやCDは、一枚一枚を取り出して丁寧にほこりをはらう。手に取るとお客様の顔が浮かぶ。「これはあの人が好きでね」「ライブにも一緒に行ったのよ」と思い出が蘇る。
あっこさんは、お客様一人ひとりの好きなアーティストを記録し、記憶している。「嵐のファンが多いんですよ」。嵐のシングルやアルバムリリースの情報をつかむと、嵐ファンのお客様に電話で連絡。「お元気?」から始まり、アーティスト情報から家族の近況へと話が広がる。「元気な声を聞くと安心するし、ここで初めてCDを買ってくれた子が大学進学で上下を離れているとか、離れていた子が上下に戻ってきてくれたなんてうれしいニュースが舞い込んできます」。
顧客名簿と注文票の2つのファイルは、あっこさんが音楽の力を伝え続けた約50年の記録。ファイルを開くと、手書きで連絡先、品番などの情報が書き込まれている。「どんなことがあっても、この2冊だけは手放せない」というほどかけがえのないものだ。

店内の奥でオープンしたころのレコードをディスプレー。「女のみち」は、同店での売上枚数のダントツ1位

豪華スターがお出迎え

店頭を飾るスターたち(かかし)。次は誰?と楽しみにする人が多い

「お客様を家族のように、友達のように温かくお迎えして、お見送りをしたい」というあっこさん。迎えてくれるのは、名だたるスターたちだ。ビートルズや嵐、サザエさん一家もやってきた。取材時には、演歌の大スターたちが令和元年を祝っていた。
大スターの正体は「かかし」。あっこさんの手作りで、その時の音楽ニュースや時事ネタ、季節の移り変わりを伝えてくれる。上下を訪れたことがある人なら、思わず見入った経験があるかもしれない。「今、誰が登場しとる?」と問い合わせもあるそう。上下町では毎年秋に「上下かかし祭り」が開催されている。その時期に訪れると、もっと多くのスターに会える、かもしれない。
注文していた商品を受け取りにきたお客様。支払いをしながら、近況報告が止まらない。ひとしきり話した後、「できることがあったら、何でも言ってね」と送り出すあっこさん。「音楽のことならなんでもしたい」と音楽愛が止まらない。

もうすぐ50周年、ぼやぼやしてられない

開店40周年記念パーティーの様子を、お客様がDVDにまとめてくれた

オープン40周年の際に上下町民会館で催したイベントには、地元住民だけでなく、レコードファンやあっこさんファンが集まった。もうすぐ50周年、どんな恩返しをしようかと企画中だ。古民家を利用してレストランを始める予定があり、「この町には美術館がないから、それもつくりたいの」と夢が広がる。
さらに大きな夢がある。それは、音楽の力を伝える音楽資料館をつくること。「モーツァルトやビートルズ、石原裕次郎に美空ひばり、最新のジェイポップアーティストのコーナーを作って作品を紹介するのもいいかな」とうれしそう。「だから、ぼやぼやしてられないんです」と笑う。
取材を終えて、「上下出身のアーティストでとても頑張ってるの」と1枚のCDアルバムを見せてもらった。愛おしそうに眺める姿を見て、それを購入した。CDを入れてくれた袋に、あっこさん直筆の言葉。「咲かそう 心に美しい花を」。あっこさんに応援してもらっているような気持ちになった。あなたの心にも、美しい花が咲きますように。

手作りのショップ袋に、音楽の力を信じるあっこさんの言葉がつづられている