家族の思い出に登場する
上下のよい肉うまい肉

重森食肉 有限会社

「よい肉うまい肉を売る店」という看板を見かけたら、足を止めずにはいられません。店を訪ねてみると、肉を並べたショーケースはなく目の前には店主のご夫婦。「いつ食べる?」「誰と食べる?」そんなやりとりを楽しみ、食べる時が一番おいしい肉を手に入れることができます。上下町で肉といえば「重森食肉」、黒毛和牛専門店です。


「間違いない」黒毛和牛の専門店

「どうやって頼んだらええん?ってよく聞かれます」と笑う店主の山名哲彦さん。店内を見回しても肉らしきものは見当たらない。カウンターに、肉の種類と100g当たりの料金が書かれたメニュー表があるだけ。これを見ながら、必要な量や予算に応じて注文。すると奥の大きな冷蔵庫から肉を取り出して、カットしてくれる。
創業は1973(昭和48)年、山名さんの奥様のお父様がこの地で創業。当時、上下町にはなかった黒毛和牛専門店となった。平成20年から山名さん夫妻が引き継ぎ、よい肉うまい肉を提供し続けている。豚、鶏なども揃うが、おすすめは黒毛和牛。鹿児島、佐賀、兵庫県産が主流だ。
長年にわたって“よい、うまい”にこだわってきたことはメーカーも承知済み。だから、常によい肉、うまい肉を仕入れることができる。上下町内の保育園や小学校でも使われており、地元住民にとっては肉といえば重森食肉。よく知る馴染みの味に、「重森食肉の肉なら間違いない」と地元住民も承知済みだ。

“よい肉うまい肉”という同店のポリシーを語る「黒毛和牛」

一番美味しく食べてもらうために

肉が固くならないように、筋の目に注意しながらスライスする

扱う牛肉を黒毛和牛に絞っている理由を聞くと「おいしさを維持しやすいから」と返ってきた。例えば、「1カ月前に食べたお肉がおいしくて、またお願いしたい」という注文があったとする。でも、1カ月前の肉はもちろんない。あの時と同じおいしさを届けることはとても難しいのだ。だからこそ、「黒毛和牛のみにすることで、一定のおいしさを維持できる。お客様のご要望にいつでも応えることができます」と力を込める。一方で、「もし売れ残って食べるなら、私もおいしい肉がええですよ」と大笑い。つまり、扱う肉は店主が食べたい肉。おいしさが約束されているようなものだ。
注文を受けて肉をスライスするのも、「食べる時に一番おいしく食べてほしい」という思いから。贈答用などで発送する場合は、食べる日を確認してその日に生の状態で届くようにする。冷凍の肉が届いて、「明日食べよう」とがっかりすることもないのだ。

お肉を食べてくれたらそれでいい

普段はご夫婦で店を切り盛り

店の敷地内では、バーベキューをすることができる。肉は用途や予算に応じて用意してくれる。中学生のクラブ活動の打ち上げなら牛肉をリーズナブルなものにしてボリュームを出す、大人の消防団は鶏肉なども加えてバリエーション豊かに、年配の方にはおいしい肉を少量、といった具合だ。
肉を注文しておけば、場所代は無料。バーベキュー設備やテーブル・イスをセッティングし、野菜、飲み物も原価で準備してくれる。「肉を使ってくれたらええんです」。そんな良心的な店を人々が放っておくはずはない。店内のカレンダーを見ると、週末はバーベキューの予約で埋まっている。夏場は「いつなら空いてますか」と聞かれるほど予約が殺到する。毎年8月15日に行われる「天領上下花火まつり」の花火も見えるそうだ。

さまざまな部位を良心的な価格で提供している

秘伝の焼き肉のタレはふるさと味

もう一つの人気商品「生の味 焼肉タレ」。小330円~

焼き肉のタレも名物だ。「肉がなくてもごはんが進みますよ」と奥様。創業者が開発したもので、今は娘である奥様が作り続けている。よく見ると2層に分離していて、1割がしょうゆで、残りの9割は野菜や果物。1年を通して材料をそろえることと、季節によって熟し具合が異なる果物を均等にくだくことが難しいそうだ。温かい場所で放っておくと発酵が進み、容器がだんだんと膨らんでくる。「夏なんて蓋を開けた瞬間にタレが天井まで飛んだこともありますよー」と笑い話。注意しておこう。
家族が帰ってくるお盆や年末年始には焼き肉、クリスマスにはローストチキンと、上下町の家族の思い出にたびたび登場する重森食肉。上下町民のふるさとの味を担う店だ。あなたの思い出にもぜひ、「よい肉うまい肉」を。

自然とお店へ引き寄せられる、引力の強い看板