豊かなくらしを提案する家具づくり。
幅広の立体的な額縁が印象的なフォトフレーム。ボタンのような滑らかな座面とカラフルなラインナップが特徴的なスツール。若者からシニア層まで、自分らしい暮らしを大切にしたいという人に幅広く人気の家具・インテリア製造を手がける伝統工芸株式会社を紹介します。
額縁づくりの技術をインテリア・家具に転用。
伝統工芸株式会社。一風変わった社名の同社は、上下町の中心部から車で15分程離れた里山の麓に工場を構える。創業から四半世紀、従事した地元の屏風、額縁メーカーの下請け事業が社名の由来。業界の斜陽化、生産の海外移転など厳しさを増す経営状況から脱却するため、平成22年に取引を中止し、家具、店舗什器のOEM生産と自社ブランドのオリジナル製品の製造に事業を方向転換した。
オリジナル製品の2本柱は、家具ブランド「LISCIO(リッショ)」とフォトフレームのブランド「FLAME」。イタリア語で滑らかという意味をもつ「LISCIO」には額縁を作る際に用いる三方留めという技術が活かされている。意匠的なデザインが同社の家具の特徴。強度も増すという。スツール、テーブル、チェアなどこの技法を用いた、特徴的なデザインが統一されている。
一方、「FLAME」シリーズは、額縁の製造に携わってきたノウハウが生かされているのはもちろん、作品を入れて飾るという性質が強かった従来の額縁の使い方から、住空間を飾るインテリアとしての魅力を付け加えた。豊富なカラー展開や、壁面に垂直に設置できる工夫、フレームとしてだけでなく鏡として使えるなど、使う人の生活に溶け込むアイデアが製品に詰まっている。
今では全国の家具・インテリアショップ70社近くに商品を卸す。海外にもアジアに一社卸先がある。商品によっては数ヶ月の予約待ちとなることもあるそうだ。
素材の持ち味を生かした、ものづくり。
服巻社長の前職はイタリア料理のシェフだったという。
「自分たちで作ったものを自分たちで売りたいという発想はそのあたりにあるのかも。包丁がノミになって、キャベツが木材に変わっただけで、ものづくりという意味では、あまり変わってないような気がする」と言う。素材の持ち味を活かすという点も料理と重なる。同社の家具も自然の風合いを活かした仕上げにこだわる。
「うちの家具ってサイズ感が小さいのです。ミニマリストというか、必要最低限のものしか持たずに、よい物を大切に使う。そんな人たちに受け入れてもらえたらいいなと思っています。」と服巻社長。手作りのものに惹かれたり、食へのこだわりが強い人、日々の生活を大切する人に共感してもらいたいという。
工場の近くの畑を借りて、近所の人のアドバイスを受けながら社員とともに農作物を育てているのも、そんな社長ならではの取り組みだ。昨年はそば、今年は落花生を育てているそうで、収穫してイベントなどで振る舞いたいという。
自分たちで作って、自分たちで売ることにこだわる。
今後は、OEM中心の経営から自社ブランドを中心としたメーカーへの転身を見据えている。「これまでは作ることが中心だったが、自分たちで売るという面を強化していきたい」と服巻社長。地域のイベントや自社主催のガレージセールなどで、新開発した製品を自分たちで販売するという取り組みもその一貫。売り場でお客さんの感想を直接聞いて、ものづくりに活かすのが狙いだ。
地域のイベントに積極的に参加するのは、上下町の人にもこんな家具を作っている会社があることを知ってほしいという想いもある。「上下にはこんな家具を作っている会社があるんですよ。」と、地元の人が自慢してもらえるような会社になりたいという。
木工女子を募集中。
上下町も例にもれず、地域の過疎化が進む。高齢化、耕作放棄地、空き家、多くの地方が抱える様々な問題に直面している。「でも自然がいっぱいあって、その中でものづくりがしたいという人も探せばたくさんいると思うんです。この環境もうちの財産です。」と服巻社長。
移住希望者に向けて、地元企業を紹介する府中市主催のイベントでは、木工製品づくりを体験してもらうワークショップを行い、好評だという。
「欲を言えば、木工女子に来てもらいたいですね。20〜30代で、田舎大好きで、ものづくりが好きな人。ついでにこの街で家庭を持って移住してもらえたら最高ですね。」とのこと。最近では、陶芸家や写真家など、この環境に魅力を感じ、移住する人も出始めている。そのような外部から来た人たちの力も借りながら一緒に地域を盛り上げていきたいという。