一度食べるとすぐに恋しくなる
上下のお母さんのうどんと愛情おむすび。

樽ちゃん

「うどんとおむすびが絶品!」と聞いて訪ねたのは、元矢野温泉前にある食堂「うどん そば カフェ 樽ちゃん」。実家にいたころを思い出す優しい味わいで、ご近所さんにはもちろん、遠方からもこの味を求めて定期的に来店するファンもいるほど。とってもリーズナブルで、お母さんたちに「もっと食べんさい!」と言われているような気分になります。一度口にすると、お母さんたちの味がすぐに恋しくなります。


「せっかく来てくれるんだから、お客様にもお得がないとね」

看板メニューは樽ちゃんうどん(500円)。手作りの出汁に、上下町のタケダフーズの麺。トッピングは矢野のシイタケやネギ、そして刻み揚げ、わかめ、かまぼこ。
単品のうどんを頼んだはずが、季節の野菜の小鉢が付いてきた。「せっかくここまで来てくれたんだから、お客様も何か得することがないとね」と話すのは代表の樽好美子さん、通称樽ちゃん。最近では小鉢が2つに増えた。
お勧めのおむすび(100円)もオーダーした。シンプルな塩むすびで、漬物が2種類添えてある。おむすびは口の中でほろほろと崩れる柔らかさで、お米の1粒1粒の甘さが際立つ。生活水の混入のない水を引いた田で作られた地元米を使い、愛情を込めて握っているそうだ。
そのほか山かけうどん、肉うどん、ざるうどんがあり、そばもある。夏には紫蘇ジュース、秋になると生姜シロップを販売するなど、主婦の感覚と経験を生かした季節ならではのメニューも登場する。

おすすめの樽ちゃんうどんとおむすび、小鉢2つ付き

リーズナブルな価格設定

旬の材料で作った佃煮や漬物が評判、手芸品もにぎやか

うどんには小鉢、おむすびには漬物、コーヒー(200円)にはお菓子が添えてある。何かとうれしいおまけが付いている。小鉢には、スタッフが持ち寄ったり知人や地元の方から頂いた野菜で作った小鉢や漬物など、「今、ある材料」を活用したもの。カップに詰めてレジ回りで販売している。食事のついでに買っていく人、これを目当てに福山や因島からの来店もあるそうだ。「ゆず味噌はいつごろ出る?」と聞かれる毎年恒例の味もある。

今日のコーヒーのお供はいちじくのコンポート

今ある材料で作る佃煮や浅漬

席は全席32人。テーブル席や囲炉裏をかこむカウンター席もある。地域の高齢者の集まりやサークル仲間の食事会、法事の食事会などにも使われる。店内は手芸品でにぎやかだ。樽ちゃんが通っていた押絵教室の皆さんの作品が飾られ、作品を眺めながら過ごしたい手芸ファンも集まる。作品を見たお客さんから着物や帯・古布を頂くこともあるそうだ。ニット帽などの編み物、マスクや布のバッグなどは、手芸が得意な樽ちゃんの親戚やスタッフメンバーの一人の作品。帽子300円とリーズナブルな価格で販売されていて、つい手が伸びる。スタッフおそろいの調理帽子もお礼にとプレゼントされ、エプロンは器用なメンバーのセンスで夏・冬用と作ってもらった。

天井の高い広い空間。カウンター席、テーブル席も

押絵のタペストリーを展示。手芸品でにぎやかな店内

手編みのニット帽やバッグ、布製のマスクが人気

たくさんの人の助けでお店をオープン、息の合うスタッフが自慢

この店は、もともとは矢野温泉街で賑わう時代、観光客を中心に土産や食事を提供する「ふるさと産品センター」だったが、樽ちゃんが定年退職後に「ふれあいの場になれば」と再開した。ところが矢野温泉は閉店(廃業)し淋しくなったが、何とか7年続けてこれた。店舗スタッフは樽ちゃんを含めて5人。通常の営業日は2人が厨房に立つため、年に何回かは5人全員で会食や日帰り旅行で楽しみを共有している。

「スタッフはもとより、常連客も一期一会のお客様ともおしゃべりしたり温かさを感じてもらい、ここをホッとする場所に感じてもらえたらと、大切な場所として運営しています。田舎ならではの、春の美しい花々、あやめ祭、秋の紅葉、かかし祭と四季折々の自然・光景が矢野にはいっぱいありますので、楽しみに足を運んでくださり、美味しいうどん・そばを食べて下さい。」と樽ちゃん。

お母さんたちの元気な笑い声。優しい空気を味わいたくて、またこの店に来たくなった。

「気を張らず楽しくがモットー」と笑う代表の樽好美子さん

スタッフの皆さん。冗談が飛び交い笑い声が絶えない